京都国際映画祭 -映画もアートもその他もぜんぶ-

昭和初頭、一般家庭用に玩具映画や小型映画として映画フィルムが販売された。
人気があった時代劇やアニメーションだけでなく、昭和天皇御大礼や満州事変など昭和史の今では貴重な記録映像群も含まれていて、これを手回しの映写機で見ていた。
戦前に各新聞社の活映部(映画部)が記録した映像は歴史の証言者であり、人類の記録文化遺産でもある。
これらの映像を時系列に繋いでみると、忘れられた昭和史の一面が見えてくるかもしれないと編集を試みた。
今回の映画祭では、如何に日本が戦争に巻き込まれていったか、「満州事変」「上海事変」までの短縮版として紹介する。

英語翻訳：ジョアン・ベルナルディ(ロチェスター大学教授)

京都に関する貴重な映像を発掘し、市民の皆さんに提供する「レトロ京都」。
今回は市民がパテ・ベビー(9.5mmフィルム)で撮影した1930(昭和5)年のホームムービー。
丹後「天橋立」を旅行/名士たちが楽しんだ「保津川下り」/「京都府駅伝」の様子を撮った3作品。
蹴上、伏見、嵯峨、御室など今ではすっかり景観が変わってしまった各所を走りきり、ゴールは平安神宮。
現在の風景を思い浮かべながら見ると、とても面白い。
付録として加えた大正期の『四条通りを走る』の映像は、玩具映画(35mmフィルム)で、まだ河原町通りが狭く、東華菜館もなく、花見小路の北側もできていない往時の京都の街が記録されていて、興味深い。

収録：黒瀬映像演出事務所

１９２６(大正15)年、阪東妻三郎人気にあやかり、阪妻プロの経営者・立花良介が世界配給を視野にアメリカのユニバーサル映画と契約を交わして合弁会社が誕生した。
だが、阪妻は松竹キネマとの専属契約があったため、彼主演の映画は輸出することができなかった。
スター不在の現代劇では興行力もなく、ユニバーサルの思惑は外れて契約解除となり、35本の作品を残してわずか半年で阪妻映画世界配給の夢は潰えた。
堀川浪之助、泉春子出演の喜劇『当世新世帯』は、この合弁会社で作られた映画のうち唯一残る貴重な作品である。

収録：黒瀬映像演出事務所

1926年製作の原題『Stop, Look and Listen』は、1927年日本公開時に『弗箱シーモン』と題されたが、当館に寄贈されたフィルムの蓋には『猛進ラリー』となっていたので、そのタイトルで上映する。
1920年頃ラリー・シモンは絶頂期を迎えるが、本作も含め短編１本に莫大な製作費を費やし、撮影日数もかさんで完成が大幅に遅れるなどの契約違反が続き、ついにヴァイタグラフ社から訴えられる始末。金銭トラブルは常にラリーにつきまとった。
物語の始まりは、ラリーが勤務する銀行に強盗が入り、ラリーは犯人と間違えられ、市民からも追いかけられる。
逃げる強盗、追うラリー、その後を追う警察、市民…。
車、バイク、列車でのアクションが続き、鉄道橋が破壊され、危機一髪の波乱万丈の連続活劇。
強盗役に極楽コンビ「ローレル＆ハーディ」のオリバー・ハーディが出ているのが話題を集めた。

収録：黒瀬映像演出事務所

長編作品『TheCloudhopper(別名Keep Jumping)』から抜粋し、Castle Film社 で『The Weak-end Driver』に題名変更して、10分弱のフィルムに編集して販売された。
この作品の凄いところは、監督がスティーブン・ロバーツで、編集が後にチャールトン・ヘストン主演超大作『ベン・ハー』のプロデューサーになるサム・ジンバリストであること。
ラリー・シモンの作品らしく列車、バイク、車でのチェイスから飛行機でのアクロバッティックなアクションまで、短くても見どころ満載のサイレントコメディ。

翻訳：吉川恵子

収録：黒瀬映像演出事務所

三大喜劇王のひとり、ハロルド・ロイドのサイレントコメディ。
7年後の『ロイドの福の神』(1926年)と同じシチュエーションで、その原型ともいえる。
物語は、無一文なハロルドと同じく餓えた少女が登場し、そこに子犬が札束を拾ってくる。
やっと美味しいパンを沢山食べられると思った矢先、それが偽札と分かり、危うく警官に訴えられるところを富豪の令嬢ミルドレッドに救われる。
ハロルドは美しいミルドレッドに一目惚れ。一方、彼女の遺産相続金を狙う悪徳弁護士たちは、街のならず者たちを使ってミルドレッドを誘拐する。
その策略に巻き込まれたハロルドは、如何に彼女を救出するのか？

収録：黒瀬映像演出事務所

ポール・パロットは、アメリカのコメディ俳優チャーリー・チェイスの実弟で、よく兄と間違えられることがあった。
後に、ポールはジェームス・パロット名で監督をしており、日本では極楽コンビの名前で知られているローレル＆ハーディの『ミュージック・ボックス』など多くの名作を撮っている。

1920年代は摩天楼の建築ラッシュで、ハロルド・ロイドの『要心無用』同様、この『ポールの空中工夫』も、高層ビルの上で危険なギャグ・コントを見せて、ハラハラさせる。

収録：黒瀬映像演出事務所

ロバート・ルイス・スティーヴンスの小説『ジキル博士とハイド氏』を原作にした怪奇無声映画。
人間は善と悪の二つの面をもつ。その二重人格を研究するジキル博士は、薬を服用するうちに自らの人格が分裂し、破滅の道をたどる。
名優ジョン・バリモアが善良で慈悲深いジキル博士と、下品で残忍な欲望のまま生きるハイド氏を演じ分ける。
その変貌ぶりと、破壊に向かって後戻りができない苦悩をスリリングに描いている。

収録：黒瀬映像演出事務所

SF映画の古典。アーサー・コナン・ドイルの原作を映画化したもの。
世界的なストップモーションアニメーションの先駆者ウィリス・オブライエンが7年がかりで製作した。
有名な『キング・コング』(1933年)も彼の仕事で、『猿人ジョー・ヤング』(1949年)ではアカデミー特殊視覚効果賞を受賞している。
この『ロスト・ワールド』は、南米アマゾンの奥地に生息していた恐竜を近代的なロンドンの街に登場させるという特撮映画の古典で、『ジュラシックパーク』をはじめSF映画の先駆として記念碑的な作品である。

収録：黒瀬映像演出事務所、おもちゃ映画ミュージアム

1927(昭和2)年、市川右太衛門はマキノ映画から独立し、奈良のあやめ池に撮影所を開いた。
その記念碑的な作品。阪妻に続いてスタープロを立ち上げ、剣戟映画全盛の時代にその一翼を担った。
物語は、些細な諍いから実父を殺された関口春之亟が、その仇討ちを誓うことから始まる。
だが生活は困窮し、旅先でついに人の懐中を盗んでしまう。
それを子狐お玉に目撃され、悪の道へと落ちて行く。
偶然、仲間と押し入った屋敷で仇と出会い、本懐を遂げるも、母はすでに生活苦から自害していた。
捕り手に囲まれた春之丞は、壮絶な闘いの中で身も心も浄化させ、お玉とともに果てる。

「京都ニュース」は、1956(昭和31)年から1994(平成6)年まで、京都市広報局が製作し、市中の映画館で上映されていたもので、市民生活、都市開発、それに伴う景観の変化、祭事や福祉、国際交流や文化活動などのトピックを集めた映像たちです。
製作されて60年以上が経過し、京都市政の歴史というだけでなく、今では貴重な映像文化財といえます。
今年の京都国際映画祭では、1956年から1989年に撮られた日本三大祭りの一つ「祇園祭」のニュース映像をまとめてご覧いただきます。

協力:京都市、京都市歴史資料館、おもちゃ映画ミュージアム(一般社団法人京都芸術文化研究所)

映画史上の名匠D・W・グリフィスの習作期短編で、まだハリウッドもなかった時代に作られたアメリカ映画最初のドタバタ喜劇です。
主演はのちにチャップリン、ビング・クロスビー、ダリル・F・ザナックらを育て、娯楽映画の基礎を築いた超大物マック・セネットです。
映画黎明期の狂騒劇を神﨑えりの流麗なピアノ伴奏でお楽しみ下さい。

※オンライン配信では、特集①〜④の作品が続けてご覧いただけます。

最初期アメリカ映画のドメスティックな喜劇を奇想天外なアイデアで味付けした傑作です。
監督・主演はマック・セネット、ヒロイン役は歴史上初の国際的なアイドルとなったメーベル・ノーマンドです。
映画黎明期のクサイ話を神﨑えりの流麗なピアノ伴奏でお楽しみ下さい(何がクサイかは見てのお楽しみ)。

※オンライン配信では、特集①〜④の作品が続けてご覧いただけます。

真面目にストーリーを追うこと自体がナンセンスと思うほどに、徹底した不条理とカオスに満ちたドタバタ喜劇の傑作です！
一発芸的なギャグがストーリーの推進力となる、映画黎明期の娯楽要素が満載の狂騒劇！
ギャグ・アニメにも影響を与えた秀逸な特殊効果などを、神﨑えりの流麗なピアノ伴奏でお楽しみ下さい。

※オンライン配信では、特集①〜④の作品が続けてご覧いただけます。

近年は動物愛護の観点からサーカスのゾウやライオンの曲芸に批判が集まり、多くの演目が禁止されつつあります。
そんな風潮をよそに、本作では道化師がライオンの脅威に曝される…今だったら、このような演出自体ゼッタイ禁止！
のギャグが炸裂する作品です。神﨑えりのノリノリなピアノ伴奏でお楽しみ下さい。

※オンライン配信では、特集①〜④の作品が続けてご覧いただけます。

普段は劇場でこどもたちを大いに楽しませる人気活弁士の山崎バニラが、自らのリミッター解除で艶っぽく語る大人のお愉しみです！
天下の洒落者、ドイツ系ユダヤ人のルビッチ監督が、ハリウッドの視点で描いたパリの享楽！
知らぬが仏の嬌態を笑い飛ばす、軽妙でフェティッシュな構成をピアノ弾き語りでご堪能下さい。

名匠ルネ・クレールの初期作品で、第四作目となります。
前々作の『眠るパリ（Paris Qui Dort）』で絶大な評価を獲得したのち、満を辞して世界公開を目的に作られました。
若きクレールが、懇意のシュールレアリスムの諸先輩、『カリガリ博士』等のドイツ表現主義、ハリウッドの娯楽映画からエネルギーを吸収して、真心をこめて編纂した《パリの街並みに潜む大人のおとぎ話》です。
天宮遥のピアノの調べに乗って、キッチュで妖しい魔法の国へとしばし旅をしましょう！

プロデューサー立川直樹＆活動写真弁士　片岡一郎によるスペシャル映画イベント！
活動写真弁士と芸人がタッグを組んでの活弁上映、会場で即興で行う活弁チャレンジなど、サイレント＆クラシック映画の新たな楽しみ方を提案！
京都国際映画祭発祥の名物イベントが、ポストよしもと(西梅田)⇒有楽町シアター(東京)を経て、いよいよ京都での凱旋イベントです！
今回は、鋭意製作進行中の新作活弁映画『I AM JAM ピザの惑星危機一髪！』ともコラボレーション、更にパワーアップした【活弁】をお楽しみください！